その奇妙な格好をしている,どこかマシュマロに似た男は云った。「人は嫌なことを忘れていくなかで,忘れなくてもいいことを,忘れない方が後々役に立つことまで忘れてしまうものです。例えば,あなたが彼女と初めて会ったときに,あなたがどう感じたか,なにを話したか。ほら,おぼえてないでしょ?」。
富士マグネディスク社が,「総合データ修復サービス」を開始した。同社は従来,ハードディスク,フロッピーディスク,MOなどのデータ修復を行っていたが,CD-ROM,CD-R,コンパクトフラッシュ,スマートメディアなどの記録メディアにも対応した。ハードディスク復旧の費用は,初期診断3万1,500円,データ修復費20万円前後まで。
よく聞く話だけれども,中古のパソコンを買ってきて,データ復旧ソフトでハードディスクをガンガン復旧させると,あらほれまと前に使っていた人のファイルが出てくる。フォーマットしてOSの新規インストールをしていても,ファイルは残っている。また,最近のOSはマルチユーザー仕様で,そのユーザーでログインしないとそのユーザーのファイルはみられないが,OSの再インストールをしてしまい,OSというタガが外れた場合は,復旧さえできればどのファイルにでもアクセスできる。
それらは人間の記憶と同様,なくなるのではなく,隠されているだけ,だ。上書きされるまではそこにそのまま残っている。データ修復費の20万というのが高いかどうかは人それぞれだろうけど,お金で買える想い出があるとしたら,値段は大して意味がないのかもしれない。忘れてしまった想い出が,人生を左右することは,多いだろうしね。
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